約4年ぶりのオリジナルアルバム『PLASMA』は、どんな一枚になったと感じていますか?

:基本的にはコロナ禍の自粛期間を経てレコーディングをしたんですけど、今の世の中で無理やりテンションを上げさせるような激しい音楽ではなく、日常に寄り添いながら「こんな世の中だけど、こういう考え方で楽しく生きていけるんじゃない?」という提案みたいな曲が多いなと思っています。中田(ヤスタカ)さんの優しさを感じました。ファンのみんなに対しても、Perfume3人に対しても。

今作ではオープニング曲に3人の声のハーモニーが入っていたり、アコースティックな音も取り入れたりと、「人間味」「温もり」をより感じ取れるサウンドが随所に鳴っているし、曲のテーマとしても、最先端テクノロジーの中の人間味やチームの熱量で感動を与えてきたPerfumeが「人間ならではの感情や情熱、愛」を改めて表現することに向き合ったアルバムであると感じました。

:嬉しい!

:私自身も、Perfumeというものからバーチャル・機械的な印象を受けるんですけど、実は全然そんなことなくて。未来やSF的な話が結構(曲に)出てくるじゃないですか。その中でも人間として生きている感じもあることが、Perfumeっぽいなって思いますね。どんどん人間らしく、触れるものになってきている気がします。

:(コロナ禍において)前よりも、お客さん一人ずつから出ているエネルギーを感じるようになりました。『[polygon wave]』のライブのときは床がLEDだったので、本来ならとっても足が痛くてしんどいはずなのに、楽しくてしょうがなくて。下から湧き上がるパワーで体が軽くなるみたいな感覚があって、「やっぱり人が好きなんだな」と感じました。テクノロジーを使ったり、最新技術に挑戦させてもらったりする現場が多いけど、やっぱり届けたいのは「人」に対してで、そこの距離をなくして繋いでくれるのがテクノロジーなんだなと実感します。

コロナ禍でバーチャルとリアルの融合が急速に進んだ中で、私たちはこれからどう生きていくべきなのかという指針も、Perfumeがこのアルバムで見せてくれていると思いました。『PLASMA』というタイトルは、どのように決まったのでしょう?

:最後のレコーディングの日に中田さんから発表されました。

:中田さんがおっしゃっていたのは、有機的だけど科学的、未来っぽいけどアナログっぽい、というか。最先端のものもプラズマだけど、ネオン管もそうだよね、とか。地球上では、ずっと形を維持しておくことが難しくて、動き続けていないと形をとどめていられない、という話もしてくれて。Perfumeの人間味のあるアナログな部分と、音楽やテクノロジーで最先端を発信していく部分にすごくマッチしているなと思います。楽曲の歌詞や意味も含めると「こんなにぴったりな言葉があったんだ! なんで今まで使ってこなかったんだろう?」と思うようなタイトルをくれました。

ジャケットのアートワークは、どのようなイメージがありますか? あ〜ちゃんとかしゆかさんの髪型がすでに話題ですね。

:“Spinning World”のMVを撮影するときに、田中(裕介)監督にジャケットも撮ってもらったんですけど、いつの時代なのか、どこの国なのか、どうしてそんなことをしているのかもわからない、不思議な世界観になりました。Perfumeは「最先端」「未来」「CG」とかのイメージがある中、今回のジャケットは手作り感があることが面白くて。完全生産限定盤の写真も、絶対にCGじゃなくて実写でやりたいというみんなの強い気持ちがあって、目を回しながらスカートをクルっとさせて撮ったんです(笑)。「PLASMA」という言葉から受ける「サイバー感」とかじゃない、人間感を感じてもらえたらなと思います。

:これ、本当に合成も何もしていないんです。三半規管の弱い私にとっては非常に大きな挑戦でした(笑)。今回は珍しく色が決まっていましたね。MIKIKO先生のイメージだと思います。「赤」というイメージが楽曲からあったんでしょうね。

:“Spinning World”が表題曲になることが決まって、MVの世界観のイメージやコンテを見せてもらったときに、「あ、髪切ったほうが世界観に合いそう」と思って。ヘアメイクさんに「こんなことないよ!」って言われて、自分で切りました(笑)。

:あ〜ちゃん:しかもそれをヘアドネーションしたんだよね。私は、三つ編みを夢で見たんですよ。最初はお衣装がもうちょっと和服っぽくなる予定だったんですけど、どこの国でもない場所というイメージがあって、結局どちらでもない感じに仕上がったんですよね。MVのイメージにオリエンタル感がありながら、チャイナな感じもありつつ、ダンスにはヒップホップなテイストが入っているのでブレードのインスピレーションもあって、この髪型にしようって思いました。

『Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”』は、どんなツアーになりそうですか?

:セットリストも決まって、演出もどんどん決まってきています。まさに『PLASMA』の世界観ですね。近年のPerfumeを追ってもらっているとより楽しめる驚きと感動があると思います。

:やっとちゃんと全国を廻れますね。「会いに行ける」という気持ちが大きくて、すごく嬉しいです。やっとオリジナルアルバムで新しい世界をみんなと共有できるという感覚で、すごくワクワクでいっぱいです。

この4年間、メンバーやファンと会えない時間が長くあったり、制限がある中でライブをせざるを得なかったり、結成から今まで経験がなかった出来事をいくつも乗り越えてきたと思います。それを経て、改めて「Perfume」という存在が自分にとってどういうものだと感じているかを最後に聞かせてください。

:改めて、Perfumeは私自身の細胞というか、Perfumeでできているんだなと感じました。『[polygon wave]』のライブでみんなの気持ちが点となって粒となって私たちの体になるという演出をやったんですけど、まさにみんなの拍手の一つひとつが点となって私の体ができていくことを感じたんですよね。登場するシーンでは3人が違うところにいたのに、なんとなくその感じを3人とも感じていたことも不思議で。いつもPerfumeのことを考えているし、ファンのみんなが「元気かな」「楽しくやれているのかな」とも考えるし。私はPerfumeでしかないんだなと感じました。

:楽しませたいと思う好きな人が集まっているところですね。2か月の自粛期間は、植物を育てたりお散歩をしたり、何気ないことを毎日やることが自分の幸せに繋がるんだなと思ったし、Perfumeという活動をやってなかったわけじゃなかったので別に焦りもなかったんですよね。でも実際に会うと、「この人、こういうことが好きなんだな」「これが楽しいって言ってたな」と思って、「笑わせたい」「楽しんでくれたらいいな」って思う。Perfumeは、そう思う人たちがいっぱいいるところ。自分が言ったことややったことで楽しんでもらえるとすっごく嬉しいし、自分だけでは生まれない、自分の中の楽しいスイッチが入る感じがします。

:自分が一番健やかであれる場所だなって思いました。Perfumeの仕事をしているときが、一番自分の体が喜んでいる。もちろん体力的にしんどかったり、ライブ前はいろんな不安もあったりするけど、自分の細胞が漲って、燃えて活性化するのはPerfumeでしかもう無理なんだと感じました。だから長くお休みをいただくと、仕事が始まったときがすごく嬉しいんです。体が健康になってる気がする。もうPerfumeなしじゃ健康に生きていけないです(笑)。

インタビュー・テキスト: 矢島由佳子

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